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【百木田家の古書暮らし】三姉妹の日常を淡々かつ鮮やかに描く漫画

おすすめマンガ『百木田家の古書暮らし』(背景は3冊の本のイラスト) 身軽な生活
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冬目景先生といえば、特に名作『イエスタデイをうたって』が有名なベテラン作家さんで、長期間に渡って着実にファンを抱えているまさに実力派の漫画家さんと言えます。

特に、淡々とした日常の中に、登場人物の心情の機微やその揺れ動きを描いていく手法では、当代きっての名手ではないかと思います。

そして、そこにほんの少しのミステリアスな要素を加えることで、物語に厚みを加えるやり方も、読者を惹きつけて離さない点かもしれません。

そんな冬目先生の最新作が『百木田家の古書暮らし』です。

期待通りに、今作も非常に面白い作品に仕上がっていますので、皆様にもぜひ読んでいただきたくてご紹介いたします。

『百木田家の古書暮らし』の基本情報

基本情報

『百木田家の古書暮らし』のあらすじと登場人物

あらすじ

祖父の残した神保町の古書店「魁星書房」を引き継ぐために、横浜から越してきた百木田の三姉妹。新店主となった次女二実(つぐみ)の悪戦苦闘と成長ぶりを中心に、古書の街でのゆるやかながら新鮮な日常と、三姉妹の三者三様の恋愛事情も描きます。

そして、そんな中で近所の怪しげな古書店の(雇われ)店長梓沢が三姉妹に接近してきます。彼は魁星書房の書庫にある「何か」を狙っているようで…

主な登場人物

百木田二実 (からきだつぐみ) : 三姉妹の次女。元はOLで、祖父の残した「魁星書房」を引き継いだばかりの駆け出し古書店主。幼い頃から本好きで、足繁く古書の街「神保町」に通っていた。店の仕事だけでなく、百木田家の家事・料理全般も担当する。恋愛経験に乏しく、自称ややコミュ障。

百木田一果 (からきだいちか) : 三姉妹の長女。建築雑誌の編集部に勤務する。一度は結婚していたが、「先輩」と呼ぶ別の男性への一方的な片思いが断ち切れずに離婚。ぐでんぐでんに酔っぱらって帰宅すること多し。

百木田三稔 (からきだみのる) : 三姉妹の三女。それなりに偏差値の高い自由な校風の高校に通う女子高生。恋愛も自由人で、モデルをやっている美少女マナにご執心の様子。

梓沢和本 (あずさわかずもと) : 魁星書房の裏手にある古書店「モラグ書店」の雇われ店長をする謎の若い男性。三姉妹に意図的に近づこうとするフシがあり、とにかく怪しい。時折り「師匠」と呼ぶ店主らしき男が訪ねてくるが、これまた怪しい。二人して魁星書房の書庫にある「何か」を狙っている様子。

『百木田家の古書暮らし』のここが面白い!

① 古書店の街「神保町」での淡々としながらも新鮮な暮らし

神保町の古書店の店先
趣深い神保町の古書店の店先

世界最大の古書店街とも言われる東京の「神保町」。
そこに、数少ないながらも暮らす人々の日常を垣間見られるだけでも興味深々です。

生活についてもきちんと考証されていて、特に感心したのは「スーパーが少ない(成城石井くらいしかない)」といった「生活者」としてのリアルな視点も手抜きなく盛り込まれて、連載開始前にきちんとロケハンしたことがうかがえます。

もちろん、普段は見ることのできない「古書店」の経営の裏側もしっかり描かれています。
蔵書整理と値付け作業、古書市場での仕入れ、同業者とのコネクション作り、出張買取など、地味ながらも興味深いものばかりです。

淡々とした日常の描写ばかりですが、そこを手抜きなくきちんと描写していくことで、登場人物たちがリアリティを持って「日々を生きている」ことがしっかりと伝わってきます。

② 三者三様の恋愛模様

冬目先生の作品の特徴としては、いかにもな「燃え上がるような激しい恋愛感情」を描くことはほとんどなく、日常生活の中で生まれた淡い恋愛感情が、ユラユラと揺らぎつつも、次第に沸々と増幅されていき、物語全編をひとつの流れのように貫いていくのが素晴らしいところです。

この作品でも、もちろんその特徴は踏襲されていて、自分の恋愛感情にまるで鈍感な二実、先輩に対する恋心をこれでもかとズルズルと引きずりまくる一果、そしてマナとの関係に淡い希望と失望の感情を同居させる三稔。

劇的な恋愛の展開を望む人にはいささか物足りないかもしれませんが、『イエスタデイをうたって』でさんざん焦らされた経験をもつ冬目マンガファンにとっては、至って平気なことです(笑)

三者三様の恋愛が、果たして物語の結末までにどんな結論にたどり着くのか、あるいは途中で途切れてしまうのか、読者としても淡々と見守っていくだけです。

③ ミステリアスな要素の匙加減

これだけでは、単なる「古書店の日常と裏側モノ」と「三姉妹の淡い恋愛モノ」だけに終わってしまいそうですが、そこはさすが冬目景先生、うっすらとしたミステリアスな要素」を投入することで、物語に厚みを持たせてきます。

具体的には、魁星書房の書庫に眠る(はずの)「何か」についての「謎」なのですが、これがあることで単調になりがちな物語の進行に、程よくテンポが生まれてきます。

また、このミステリアスな要素を過度に前面に押し出すことはしないことによって、「日常」「恋愛」「ミステリー」の三要素がとてもバランスの取れた作品に仕上がっています。

この辺りの「匙加減」は、さすが冬目先生といった感じです

ちなみに、どのような「謎」なのかは、もちろん実際に作品に読んでお楽しみください。

まとめ

今回は、冬目景先生の最新の長編連載『百木田家の古書暮らし』についてご紹介しました。

これまで『イエスタデイをうたって』などで冬目作品に親しんできた人はもちろんのこと、「古書店」というキーワードから気軽に入って、これからどっぷりと冬目沼にハマっていきそうな方にもおススメの作品です。

冬目先生の作品は、気が付いたらいつの間にか完結している場合も多いので、できれば連載中の今、リアルタイムで作品のワクワク感を楽しんでいただければと思います。

よろしかったらこちらも…

最近(と言っても2015年連載終了)の冬目先生の作品の中では、地味ですが個人的に大好きだったのが、建築をテーマにした『マホロミ 時空建築幻視譚』です。

当時、気が付いたらいつの間にか連載終了してたんですよね。

百木田家のほうにも建築関係の人が登場するのは、もしかしてこの作品の名残かも?
なんとなく、両作品の世界観や空気感はどこか地続きのようなものを感じてしまいます。

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