先日、福岡から長崎へ行く機会がありましたので、JR(リレーかもめ+西九州新幹線)ではなく、久しぶりに高速バス「九州号」を利用してみました。
圧倒的なスピードながら途中で対面乗り換えが必要な西九州新幹線と、多少時間はかかるものの乗り換え無しで長崎まで行けてしまう高速バス。
今回は対照的なこの2つの交通機関を、その両方に実際に乗車してみた体験から比較してみます。
どちらを利用しようかお悩みの方に、ご乗車の参考にしていただければと思います。
福岡~長崎高速バス「九州号」の基本情報
福岡と長崎を結ぶ高速バス「九州号」には、「スーパーノンストップ便」が2系統、他に「福岡空港経由」、「嬉野バスセンター経由」、「嬉野インター経由」などがあります。
ここでは、西九州新幹線との競合との比較の観点から、ここでは速達タイプの「スーパーノンストップ便」を取り上げます。
九州号「スーパーノンストップ便(出島道路経由)」
(参照) 西鉄バス公式サイト 高速バス情報 福岡~長崎(九州号)
高速バス「九州号」のスーパーノンストップ便の中でも、最速達タイプがこの「出島道路経由」です。
西鉄天神高速バスターミナルを出た後は、本当に「ノンストップ」で長崎市内まで走り抜けます!
長崎市中心部に直結するバイパス「出島道路」を利用するため、市内での一般道走行距離が短くてすむので、比較的渋滞に巻き込まれにくいルートです。
最大の特徴と利点は、「大波止」に停車することです。
このバス停は、市内最大の繁華街である「浜町」や、五島行きや世界遺産の軍艦島クルーズのフェリーターミナルに近く、長崎駅よりも南側の地区に用がある人にとって便利な停車設定となっています。
九州号「スーパーノンストップ便(昭和町経由)」
高速バス「九州号」のスーパーノンストップ便の中でも、標準タイプがこの「昭和町経由」です。
出島道路ではなく、長崎バイパスを降りた後、一般道で北側から市内に入っていきます。
そのため、市内では一般道を長く走ることになり、時間帯によってはやや渋滞に巻き込まれやすい場合があるのが弱点です。
出島道路経由とは違って、長崎駅よりも北側の長崎大学や浦上駅周辺に用のある人に便利な停車設定となっています。
※また、一部の便が「大村インター昭和町経由」として、途中の大村インターにも停車します。
「九州号」の割引きっぷ(往復券・回数券)
独特な「九州号」の割引制度
高速バス「九州号」には、『〇日までに予約・購入なら△%割引』のような、事前購入による割引きっぷ制度が存在しません。
その代わりに、複数回の乗車を前提として、「往復券」や「回数券」の購入で乗車1回あたりの料金が割安になる制度が中心なのが特徴的です。
通常の片道料金が2900円ですから、「往復券」だと片道200円安くなる程度ですが、これが「回数券」だと片道400円も安くなり、かなり魅力的になってきます。
さらに、紙券ではなく、スマホ上で表示するタイプの「WEB回数券」ならば、片道650円も安くなるのです!
『片道あたり2000円と少しで福岡~長崎を移動できる!』と考えると、他の交通機関よりも圧倒的なお得感があります。
その意味では、「九州号」は「往復で利用する」あるいは「何度も利用する」というヘビーユーザー向けに割引制度が設計されていると言えそうです。
その一方で、「片道のみ」の割引きっぷ制度が存在しないことから、その大半が[福岡→長崎]あるいは[長崎→福岡]の片側利用しかしないような観光客にとっては、正規料金で乗るしかないのがやや不便な点です。
とはいえ、正規料金の片道2900円で乗ったとしても、JRの「リレーかもめ+西九州新幹線」よりも遥かに安い料金設定なのは大きな魅力です。
割引きっぷの購入方法
「九州号」を割引価格で乗りたい場合のきっぷの購入方法は次の2通りあります。
① 乗車ターミナルの窓口・自動券売機で購入
② Web上のバス予約サイトで購入
①は、主に事前に電話で予約したり、予約なしで当日直接乗車ターミナルに駆け込む場合です。
この場合は、片道券に加えて、『往復券』と『回数券』が直接購入できます。
②は、提携しているバス予約サイトにてインターネット上で予約する場合です。
この場合は、片道券に加えて、『往復券』と『web回数券』が予約・決済できます。
「九州号」では、インターネット上での予約は、九州内の高速バス予約ポータルサイト『@バス(あっとバス)』で行うとされています。
が、実際にはそこから『ハイウェイバスドットコム』のページに飛ばされるので、最初からこちらのページで便を検索したほうが速いかもしれません。
実はここでも予約できます…
公式サイト的にはインターネット上の予約・決済は『@バス(=ハイウェイバスドットコム)』でしかできないように書かれていますが、実は裏ワザ的に『楽天トラベル』の高速バスページからも予約できてしまいます。
ただし、回数券などの購入はできません!
基本的に、「正規料金」で「片道利用」に限定されます。
割引が使えないのは残念ですが、「楽天ポイントを使いたい/貯めたい」という人や、「観光目的なので片道の利用しかしない」という人は、こちらから予約したほうが便利かもしれません。
「九州号」と「西九州新幹線かもめ」を比べてみた
ここで気になるのが、福岡~長崎を移動するにあたって、高速バス「九州号」と、JRの「リレーかもめ+西九州新幹線かもめ」のどちらを利用したほうが総合的に便利なのかということです。
① 基本的な比較用データ
② 料金面での比較
料金面でいえば、「九州号」の圧勝です!
もともとの正規料金が安いばかりか、「WEB回数券」を利用すれば2000円台前半まで安くなります。
しかも、これら回数券は当日でも購入可能です。
一方で、「西九州新幹線」はその料金の高さがかなりのネックになります。
なにしろ、正規料金が高速バスの2倍もしてしまうのはいくら何でも高過ぎです。
JR九州お得意のネット割引きっぷもありますが、最安で乗ろうとすると、7日前までに予約購入が必要なものを使ったとしても、それでも高速バスよりもまだまだ割高です。
正直、福岡~長崎をとにかく「安く」移動したいなら、高速バス1択と言えるでしょう。
③ 所要時間での比較
所要時間では、西九州新幹線のほうが圧倒的な優位にあるように見えますが、これはカタログスペック上のことで、ここには「見えにくい注意点」が3つあります。
(1)「西九州新幹線の再速達接続便は1日に数本しかない」
最短所要時間の「1時間20分」が実現できるのは、在来線のリレーかもめとの接続が最も上手くいった場合の便に限られ、これは1日にわずか数本しかありません。
実際には、もっと時間がかかる便が多く、大半の便が1時間35分から1時間45分かかってしまいます。
そのため、新幹線の時間的優位性は、思ったよりも少ないのが現実です。
(2)「高速バスの場合は『天神』から乗れる!」
実際に福岡~長崎を移動移動した経験がある方ならお分かりでしょうが、長崎へ行くためにわざわざ博多駅から高速バスに乗る人は意外と少なく、繁華街にあって利便性の高い「天神高速バスターミナル」から乗車する人が多いのです。
これこそが、表面上からは見えない「九州号」が持つ『隠れた優位性』ではないかと思います!
この『天神』からだと、長崎駅まで2時間7分、大波止までだと2時間2分です。
これでは、新幹線の持つ時間的優位性はやや霞んできてしまいます。
(3)「乗り換えによる時間の分断」
西九州新幹線では、武雄温泉駅での「対面乗り換え」が必須です。
そのため、最速便の1時間20分は、連続した時間ではなく、「54分+3分+23分」に分割されてしまいます。
車内でひと眠りしようとしても、ノートPCを開いても、必ず対面乗り換えのタイミングで「水を差される」形になってしまい、移動の時間を休息や仕事にフル活用できないのは地味に痛い問題です。
また、「乗り換えがある」ということを常に気にしていなければならないため、見えない心理的不安も付きまといます。
これは、私が以前に西九州新幹線に乗車した際にも実感したことです。
その点、高速バスならば、乗ってすぐに爆睡モードに入れば、2時間以上の連続した休息時間が確保できます。
うっかり寝過ごしても、終点の長崎駅前バス停で運転手さんから起こされるだけです。
実際に高速バス「九州号」に乗ってみた!
それでは、私が実際に高速バス「九州号」で、博多から長崎(大波止)まで乗車した際の体験記をレポートいたします。
あえて博多バスターミナルから
今回は、博多駅に隣接する「博多バスターミナル」から、長崎行きの「九州号(スーパーノンストップ[出島道路経由]便)」に乗車しました。
正直なところ、天神高速バスターミナルから乗車したほうが個人的には便利だったのですが、「西九州新幹線との比較がしたい」というのもあって、今回は博多からの乗車を選びました。
ネットから予約することもできるのですが、私は電話で予約して、自動券売機で支払い・発券という形で乗車しました。
これまで色々試したのですが、個人的にはこのやり方が一番手早くて「楽」ではないかと思います。
また、電話予約であっても、ちゃんと希望の座席をリクエストすることが可能です。
博多バスターミナル出発時点で、車内は4割程度の乗車率です。
しばらく福岡市内中心部の一般動を走って、「西鉄天神高速バスターミナル」へ。
ここで、やはり多くの乗車があり、車内はほぼ9割方埋まってしまいました。
バスは天神北ICから高速道路に入り、文字通り「スーパーノンストップ」で長崎を目指します。
車内は快適!ただ唯一…
車内は2列+2列の4列シートです。
以前は、1列+2列の3列シートもあったのですが、車両更新の際に全て4列シートの車両に統一されてしまいました。
ありがたいのが、全シートに個別の電源コンセントが装備されていることです。
何故か「携帯電話専用」とのシールが目立つように貼られています(ノートPCはダメなのか?)。
※コンセントではなく「USポート」設置タイプの車両もあります。
また、もちろん車内wifiも完備されています。
計測してみたところ、あまり速くはありませんが、一般的な使用には十分な速度でした。
ただ、ここでこの車両の唯一の弱点を発見してしまいます。
それは「背面テーブルが無い」ということ!
座席横の折り畳み式テーブルすらもありません。
テーブルが無いので、買ってきたお弁当を食べるのにもひと苦労です。
また、ノートパソコンで作業をする予定でしたが、膝の上に載せてPCを操作するのには慣れていないため、今回は作業を諦めてしまいました。
せっかく便利なバスなのに、どうしてテーブルの無い車両を導入したのだろうか?
残念というよりも、なんだか「不思議な」感じでした。
爆睡できる安心感
この日はあいにくの雨模様で、車窓はほとんど楽しめませんでした。
そこで、テーブルの件でノートPCでの作業を諦めたのもあって、早々に仮眠タイムに切り替えです。
最悪、長崎まで寝たままでもいいという安心感もあって、すぐに寝ることができました。
この辺りは、乗り換えの無い、直行便の高速バスだからこその利点です。
結局、大宰府から大村のあたりまですっかり寝入ってしまったため、その間の写真がありません(笑)
あっさりと長崎到着
大村のあたりで目が覚めました。
晴れていれば、大村湾の景色を一望できるのですが、この雨模様では仕方がありません。
バスはその後も順調に走り、諫早を抜け、最後の長崎出島道路のトンネルに入ります。
トンネルを抜けると…そこは雨の長崎の街でした。
この出島道路を経由するおかげで、バスは長崎の市街地にダイレクトにアクセスできます。
そこからは、ものの2~3分で「大波止」のバス停に到着。
雨での遅れも心配しましたが、見事にピタリと定刻通りの到着です。
私以外にも、車内の半数以上の乗客がここで下車しました。
実際に乗ってみた感想としては「めちゃくちゃ楽!」というのが正直なところです。
所要時間の長さは(途中寝ていたのもあって)全く気になりませんでした。
そして、一番大きかったのは、やはり「乗り換え無し」の安心感だったように思います。
まとめ
今回は、高速バス「九州号」に実際に乗車してみて、博多~長崎の移動手段としての「高速バス」と「新幹線」を比較してみました。
料金的には、圧倒的に高速バスに軍配が上がりました。
また、所要時間の優位性では新幹線に分がありますが、それが思ったよりも「強固な」アドバンテージではないことも分かりました。
実際に乗車してみた感想としては、福岡~長崎間の高速バスはかなり「使える!」交通手段だと言えます。
ただし、どちらの「勝ち」や「負け」といった単純なものではなく、それぞれに一長一短があります。
- 【西九州新幹線】 基本的に片道での利用が多く、話題性も加味した「観光客向け」
- 【九州号】 往復や複数回乗車が多い「ヘビーユーザー向け」や、天神からの利用が多い「地元民向け」
今後は、それぞれの特徴を活かした、乗客の「棲み分け」がより一層進むのではないでしょうか。
福岡~長崎の移動でお悩みの方は、高速バス・新幹線のそれぞれの特徴と長所・短所を頭に入れて、賢く「使い分け」していただければと思います。