先日、知り合いが福岡市から山口市へ行く用があるので交通手段を調べてほしいと頼まれました。
私は国内旅行業務取扱管理者の資格を持っているので、よくこのような調べ物を頼まれたりプランを立ててあげたりします。
便利な時代なのでスマホの乗り換え案内アプリを使えばルート自体は誰でも簡単に検索できます。
しかしながら、「それで実際のところはどのルートが一番便利なの?」という一歩踏み込んだ部分を知りたかったようです。
ここで参考までに依頼者の属性を紹介すると以下のようになります。
・20代女性、ただし一人旅は初めて
・スマホは日常的に使うがほとんどがメールとLINE、動画視聴のみに使用
・基本的な決済手段は現金
ネットにも詳しくなく、さらに初めての一人旅ということで不安を覚えているようです。
とはいえ、実は私自身も山口市には行った経験が無いためにいまいち勝手が分かりません。
福岡から広島へのルートや費用ならば調べることはよくあるんですけどね。
しかし、実際に山口への行き方を調べてみて意外な発見がいくつかあったので紹介したいと思います。
定番の「新幹線+在来線」

まず最初に思いついて調べてみたのが新幹線と在来線を組み合わせる定番のルートです。
[ルート] 博多駅 →(新幹線)→ 新山口駅 →(在来線)→ 山口駅
[費用] 5,610円 (※新幹線自由席特急料金2,530円含む)
[所要時間] 1時間4分 (※最速の場合)
さすがは新幹線、最速ならば乗り換えを含めても1時間ちょっとで到着してしまいます。
ただ、費用についてはどうしても割高感が否めません。
割高に感じる博多~山口・広島方面への鉄道移動
博多駅から山口駅までの営業距離は合計で160.6kmです。
運賃・料金については正直言って「この距離の移動でこの値段はちょっと高いな」という感じです。
どうしても新幹線を使用する分が割高になってしまうのは仕方がない気もしますが、
九州内だけの移動では以下のような割引きっぷの充実っぷりを見慣れているので、どうしても割高に感じます。
[博多~鹿児島中央] 「九州ネット早特7」 8,500円 (九州新幹線利用)
[博多~熊本] 「九州ネット早特7」 3,200円 (九州新幹線利用)
[博多~長崎] 「九州ネット早特7」 2,340円 (在来線特急利用)
その一方で、博多駅から新幹線で本州方面へ向かう場合は割引きっぷ自体が非常に少ないのです。
[博多~新大阪] 「スーパー早特きっぷ」 10,480円
[博多~新大阪] 「eきっぷ」 13,490円 (※特急券部分のみの割引)
[博多~広島] 設定なし
[博多~新山口] 設定なし
なんと博多駅から新山口駅・広島駅までの区間には割引きっぷの設定そのものがありません!
この中途半端な区間については基本的に普通運賃・料金で利用してくださいというのがJRの考え方のようです。
圧倒的な安さが魅力の高速バス

鉄道に対して最大の対抗馬というか宿敵と言えばなんといっても高速バスです。。
この中途半端な区間に高速バスなんてあったかな?と思いながら調べてみると…確かにありました。
JR九州バスの「山口ライナー」ですが、驚きのその価格!
[ルート] 博多バスターミナル →(直通・乗り換えなし)→ 山口駅
[費用] 「普通運賃」 3,200円 (当日購入)
「早得1」 1,020円 (閑散期の平日限定。前日までに要予約)
「早得1」 2,040円 (繁忙期および金土日祝日。前日までに要予約)
[所要時間] 3時間55分
この料金の安さは圧倒的ですね。
特に平日の「早割1」は新幹線利用の5分1以下のまさに破壊的な安さ!
わずか1000円足らずで福岡から山口まで移動できるなんて驚愕です。
所要時間は4倍近くかかってしまいますが、私だったら高速バスで即決です。
ちょっと面倒な高速バスのネット予約
しかしながら、ここで問題が持ち上がります。
JR九州バスのホームページ内では直接web予約ができないのです。
ページ内を何度か見回って、やっと外部サイトへのリンクを発見しました。
ひっそりと分かりにくい所に「発車オーライネット」へのリンクが貼ってあります。
飛んだ先で勝手に予約してください、あとはウチでは関与しませんのでという感じです。
一応、電話予約センターの電話番号も書いてありますが、この日はもう営業時間外です。
もしネットに慣れている人、旅に慣れている人であれば、
このままバスの予約サイトに飛んで、サクッと会員登録、ネット上で決済なんて朝メシ前です。
10分もかからずに「早割1」の平日1,020円の予約をゲットしてしまうでしょう。
しかしネットに慣れていない人、旅そのものに不慣れな人が、
わざわざ別サイトまで行って、会員登録をして、複雑な決済方法を選択して…
これでは途中で心折れて断念しまうことも十分に考えられます。
結局選んだのは…
両方のプランを提示してみましたが、依頼者はしばらく「うーん…」と思案していました。
それで結局選んだのは「新幹線+在来線」のほうのプランでした。
やはり新幹線の速さを最優先したのかなと思って聞いてみると、意外な理由が返ってきました。
「高速バスは所要時間がかかっても別に気にはならない」
「ただし高速バスのネット予約はなんとなく分かりづらくて面倒だ」
「新幹線なら当日でも簡単に駅で切符が買える」
「乗り換えが分からなくなったらとりあえず駅員さんに聞けばいいので安心」

ここまで圧倒的な価格差を見せつけられるとてっきり高速バスを選ぶのではと思いましたが、
とにかく「面倒くさいのは嫌だ!」という理由で鉄道に軍配が上がりました。
確かに、鉄道ならば当日に博多駅のみどりの窓口に行って「山口駅まで片道で!」と言えばよいだけなのですから。
単純な安さだけではなく、価格には表れない部分で勝負が決することもあるということです。
ネット予約全盛の時代においても、対面式の旅行代理店の窓口がそれなりに需要がある理由がなんとなく分かった気がします。
今回は色々な意味でとても勉強になりました。