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【やまさん~山小屋三姉妹~】絶妙なバランスが見事な登山漫画

おすすめマンガ『やまさん~山小屋三姉妹~』(背景は山の線画イラスト) 身軽な生活
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私は登山が大好きです!
しかし、自分で山に登ることはしません。

実際に登山を始めようとすると、道具をそろえるのに手間と費用が掛かります。
また、登山の耐えうるための体力にも自信がありません。

しかし、実際に登山が出来なくても、「山を楽しむ(気分になる)」方法があります。
それは「山を舞台にしたマンガ」を読むことです!

これならば、装備を揃える資金力が無くても、強靭な体力が無くても、自宅に居ながらにして手軽に山登りの世界を(疑似)体験できます。

以前にある番組で、お笑いコンビ「どきどきキャンプ」の岸学さんが、「山には登らないけど、石塚真一先生の登山漫画『岳』を全巻読んでいるので知識だけはある!」と語っているのを見て、「登らないけど、山(マンガ)は好き」という層は確実に存在するのだと実感しました。

そこで今回は、なかなか自分で山に登るチャンスがない「隠れ登山好き」の皆さんのために、数ある「山マンガ」の中から、最近の作品としては個人的に一番のお気に入りの『やまさん~山小屋三姉妹~』についてご紹介いたします。

「やまさん~山小屋三姉妹~」の基本情報

基本情報

「やまさん~山小屋三姉妹~」

「やまさん」のあらすじと登場人物

【あらすじ】

特盛連峰で三姉妹が経営する山小屋「雲海小屋」。

三女の同級生で、都会からやってきた訳アリ男子高校生の西園寺は、ひょんなことからこの山小屋を手伝うことに。

常連の登山客とのふれあいやガイドさんたちの協力も得ながら、大自然の厳しさや次々に起こるトラブルを乗り越えつつ、山小屋での日常を描きます。

【主な登場人物】

西園寺 : 都会の高校から三女と同じ山麓の分校に転校してきた、何やら訳ありのヒョロヒョロ男子高校生。三女に一方的に恩義を感じ、山小屋を手伝うことに。成績は優秀。実家はかなりのお金持ちの模様。

華歩 : 三姉妹の三女。西園寺と同じ高校の分校に通うが、基本的には山小屋を手伝って過ごす。山麓から荷物を運ぶ「歩荷(ぼっか)」を担当。大の勉強嫌い

:三姉妹の次女。SNSを駆使した山小屋の宣伝と経理を担当。山暮らしはあまり好きではない様子。アタマは切れるが、体力はゼロ

沢子 : 三姉妹の長女。怪我で休業中の父親に代わって山小屋の責任者を務める。無類の「山オタク」で、元山岳ガイド経験あり。

「やまさん」のここが面白い!

①「山」を描くのか、「人」を描くのか、その絶妙なバランス感覚!

「登山漫画」や「山マンガ」といえば、大きく2種類に大別できるように思います。

ひとつは、「山」を中心にして描いたもの。

つまり、「山登りそのものの魅力」あるいは「挑戦や畏怖の対象としての山」がストーリーの中心にドーンと据えられていて、主人公や登場人物たちは、それらの大きなテーマの体現者として動くものです。

山登りの魅力に取りつかれてその一生を捧げたクライマーの物語だったり、孤独な登山家の未踏峰や難関ルートへの挑戦などのイメージですね。

具体的な例を挙げると、『神々の山嶺』や『孤高の人』が当てはまるかと思います。
また、『岳』もどちらかというとこちらに分類してもいいかもしれません。

もうひとつは、「人」を中心に描いたもの。

言い換えれば、「青春群像」や「人間としての成長」がストーリーの中心にあり、その舞台装置として「山」が選ばれているものです。

学校の登山部が舞台であったり、山での他の登山者との出会いや交流が、物語の根底にあるタイプです。

例えば、『山を渡る -三多摩大岳部録-』や、最近連載が開始された『つばめアルペン』が挙げられます。
また、『ヤマノススメ』もそうですし、広~い意味でいえば『山と食欲と私』もこの仲間に入るかもしれません。

もちろん、両者にはそれぞれの甲乙つけがたい面白さや魅力があります。

そして、今回紹介している『やまさん』は、「山」も「人」も両方とも絶妙なバランス感覚で描いている稀有な作品なのです!

決して安直に両者の良いところ取りをして共倒れなどすることもなく、極めてニュートラルに、「山」の魅力も、「人」の面白さも見事に描き切っています。

いやあ、これをサラッとやってのける作者の力量、結構スゴいことだと思うんですけどね。

② 山の知識はしっかりと!しかしひけらかすことはしない…

作者の坂盛さんについて調べてみたのですが、作者御自身に登山経験があるのかまでは分かりませんでした。
しかし、作品を読む限りでは「ちゃんと山のことを知っている」感はヒシヒシと伝わってきます。

よくありがちな「編集さんから言われたので、とりあえずWikipediaや入門書で調べてみました…」感はありません。

おそらく、作者本人がそこそこ経験のあるクライマーなのか、あるいは周囲に立派な「山オタク」の知り合い(または山オタ編集者)がいるのは間違いない、とにらんでいます。

ここでポイントなのは、この作品は、登山マンガにありがちな「山とは」「登山とは」といった『登山知識披露大会』には決してならない!という点です。

山や登山の知識については、ストーリーの進行上で必要なときだけに的確に、しかもさりげなく挟みこまれます。

かといって、山の厳しい現実を避けて都合の良い平和な事柄だけを描くようなこともしません。

例えば、物語は第1話でいきなり登山道からの「滑落」で幕を開けますし、その後も要所要所で「ヘリでの救助要請」「夜間の遭難」「避難小屋」といったそれなりに深刻なテーマもきちんと挟んできます。

山は楽しい、そして厳しい」という当たり前の事実を、過不足なく伝えてくれる点は見事です。

ここでも、作者の持つ、ひとつの作品を描く上での「バランス感覚」の絶妙さに唸るばかりです。

③ ありそうでなかった「山の日常」マンガ

これまでの山マンガといえば、基本的には「登山者側」の視点で描かれているものがほとんどでした。
もっと言えば、主人公は基本的に都市生活者であり、その視点から、山は「非日常」を味わうための現実逃避空間であることがお決まりのパターンだったのです。

また、場合によっては、山は「征服すべきモノ」として、主人公が命を賭して挑む対象と描かれる作品もありました。

しかし、この『やまさん』で描かれるのは、「登山者を迎える側」の立場であり、その「日常」です。

これまでの登山者側からの視点とは180度異なる側から覗く山の世界は、これまで山マンガに親しんできた者にとっても大いに興味をそそります。

単純に「山小屋の裏側ってこうなっているんだ!」という新鮮なワクワク感もあれば、「山小屋ってこんなに大変なんだ…」という重~い驚きもあります。

そして、ここでも作者の「バランス感覚」は遺憾なく発揮されていて、「山小屋の生活はこんなに大変なんですよ!」という単なる苦労譚にはなっていません。

もちろん、「クレーマー登山者」「山での盗難事件」「遭難と救助要請」といった重いトピックも登場しますが、それらは過不足なく、自然に山小屋での日常の中に織り込まれています。

登場人物たちが過ごす、ある意味生き生きとして、ある意味淡々とした、山での日常は、何度も読み返したくなる不思議な魅力を持っています。

まとめ

今回は、山小屋を舞台とした『やまさん~山小屋三姉妹~』についてご紹介しました。

山好きの人には、山小屋の生活や舞台裏が覗ける貴重で新鮮な「山マンガ」であり、間違いなく面白いと言えます。

また、全く山に興味がない人でも、「日常マンガ」の一種として楽しめる不思議な味わいがあります。

とにかく、一度読んでみて、この作品のもつ絶妙な「バランス感覚」を味わっていただければと思います。


こちらの山マンガもおすすめです

話の中に少し登場しましたが、空木哲生先生の「山を渡る -三多摩大岳部録-」についてもおすすめの面白い山マンガなので、いずれまた別の機会にご紹介したいと思っていますのでお楽しみに。

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